「パターン、Wiki、XP」を読み終えた。約1ヶ月か。
『デザインパターン。Wiki。エクストリームプログラミング。
この、一件何の関係も無さそうな3つの概念の裏には、'60年代の建築家アレグザンダーの思想が関わっていた…!』
というアオリにどきどきしてしまう人は、買って損はない。以下は「ネタバレ」を含むので注意。
さて、本書はアレグザンダーが建築における「無名の質」を実現するために考えた、6条から成る「創造の原則」と、それを元に生まれたデザインパターン、Wiki、エクストリームプログラミングについて考察する。「無名の質」には明確な定義が存在しないが、歴史ある町並みの醸し出す「なんかいい感じ」のことを名付けられない性質、即ち「無名の質」と呼んでいるようだ。
では「無名の質」を備えた建築を人工的に作るには、どうすれば良いだろうか。このために考えられたのが以下の6つの「時を越えた創造の原則」だ。
- The principle of organic order(有機的秩序の原則)
- 〜participation(参加)
- 〜piecemeal growth(漸進的成長)
- 〜patterns(パターン)
- 〜diagnosis(診断)
- 〜coodination(調整)
まあ、部分から少しずつ、利用者が協力し合って、パターンを作りながら創作を進めればいい感じになるんじゃね、ということである(大ざっぱすぎるぞ)。
ただ気をつけなければいけないのは、結局アレグザンダーがこれを利用して無名の質を手に入れた、とは書かれていないところだ。どちらかというと、「アレグザンダーの無名の質を求める旅はこれからも続く…!(次回作にご期待下さい)」という状態のように見える。
だから「この原則に従えば無名の質が手に入る」ではなく、「この原則に従えばWikiやXPが実現したものが手に入る(かも)」と考えた方が良いのではないか。もちろん、それが無名の質なのだと考えることもできるが、無名の質自体が曖昧な概念なのでよく分からない。それでも、Wikipediaを初めとした成功を見れば、「時を越えた創造の原則」が持つ力には考えるだけの価値が充分にあることが期待できる。
6つのうち最も重要なのは「パターンの原則」なのだろうが、個人的には「参加の原則」が気になる。参加者が設計段階から関わるXP、参加者が実装者ですらあるWiki。アレグザンダーの描く未来はどのようなものなのだろうか?全ての人が、自分に必要なものを自分で作る時代?そういや森博嗣も最近、連載で「50年後は一般人が音楽を気軽に作成・アレンジできるようになる」とか予言してたな…。
(プログラマ的に)身近なところでは、集合知とか、CGMとかに興味のある人は一度読んでおくといいだろう。面白かった。
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