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2009年9月3日木曜日

「パターン、Wiki、XP」が描く一億総クリエイター時代?

「パターン、Wiki、XP」を読み終えた。約1ヶ月か。

『デザインパターン。Wiki。エクストリームプログラミング。

この、一件何の関係も無さそうな3つの概念の裏には、'60年代の建築家アレグザンダーの思想が関わっていた…!』

というアオリにどきどきしてしまう人は、買って損はない。以下は「ネタバレ」を含むので注意。




さて、本書はアレグザンダーが建築における「無名の質」を実現するために考えた、6条から成る「創造の原則」と、それを元に生まれたデザインパターン、Wiki、エクストリームプログラミングについて考察する。「無名の質」には明確な定義が存在しないが、歴史ある町並みの醸し出す「なんかいい感じ」のことを名付けられない性質、即ち「無名の質」と呼んでいるようだ。

では「無名の質」を備えた建築を人工的に作るには、どうすれば良いだろうか。このために考えられたのが以下の6つの「時を越えた創造の原則」だ。

  • The principle of organic order(有機的秩序の原則)
  • 〜participation(参加)
  • 〜piecemeal growth(漸進的成長)
  • 〜patterns(パターン)
  • 〜diagnosis(診断)
  • 〜coodination(調整)

まあ、部分から少しずつ、利用者が協力し合って、パターンを作りながら創作を進めればいい感じになるんじゃね、ということである(大ざっぱすぎるぞ)。

ただ気をつけなければいけないのは、結局アレグザンダーがこれを利用して無名の質を手に入れた、とは書かれていないところだ。どちらかというと、「アレグザンダーの無名の質を求める旅はこれからも続く…!(次回作にご期待下さい)」という状態のように見える。

だから「この原則に従えば無名の質が手に入る」ではなく、「この原則に従えばWikiやXPが実現したものが手に入る(かも)」と考えた方が良いのではないか。もちろん、それが無名の質なのだと考えることもできるが、無名の質自体が曖昧な概念なのでよく分からない。それでも、Wikipediaを初めとした成功を見れば、「時を越えた創造の原則」が持つ力には考えるだけの価値が充分にあることが期待できる。

6つのうち最も重要なのは「パターンの原則」なのだろうが、個人的には「参加の原則」が気になる。参加者が設計段階から関わるXP、参加者が実装者ですらあるWiki。アレグザンダーの描く未来はどのようなものなのだろうか?全ての人が、自分に必要なものを自分で作る時代?そういや森博嗣も最近、連載で「50年後は一般人が音楽を気軽に作成・アレンジできるようになる」とか予言してたな…。

(プログラマ的に)身近なところでは、集合知とか、CGMとかに興味のある人は一度読んでおくといいだろう。面白かった。

2009年6月4日木曜日

「600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス 」

自炊erにとって無くてはならないレシピサイト、クックパッドの内部に迫る一冊。面白かった。


とにかく数ページごとにtumblrでQuoteしたくなる名言が埋め込まれてるので、詳細は本を読んでもらいたいが、とりあえず気になったとこを。

まずは会社の理念について。

  • 会社設立の根底にあるのは、「心からの笑顔」を増やすこと。それが「食」というテーマと結びついて、クックパッドというサービスができた。
  • 料理を楽しむことで、笑顔になってもらうことがゴール。極端な話、ユーザを増やすことすら第一の目標ではない(実際、最初の頃はサーバの負荷を抑えるため、なるべくユーザが増えないようにしていたという)

次に、徹底したユーザ目線のデザイン。

  • ユーザのことを徹底的に考える。特に、UI設計に関するこだわりが異常。サイトの細部に至るまで、ユーザがどう感じるかを基準に調整されている。
  • 例えば「白菜」という検索を行うときは、白菜が余っていて、大量に消費したいことが多いのだという。なので、白菜を多く使うレシピが上位に来るように調整している。
  • このような微調整に欠かせないのがログの解析で、専用のツールを作ってユーザの導線を研究している。
  • 「誰が見ても検索窓を見つけられなければならない」「広告が一番目立つとか論外」「説明が必要なサービスは、レベルが低い」

そして、ユーザと広告主の両方を満足させる広告戦略。

  • 徹底したこだわりでユーザは100万人にまで増えたが、それだけでは食っていけないのがWebサービスの辛いところ。経営的に厳しい時代が何年も続いたという。そこから、「ユーザだけでなく、広告主の立場に立って考える」ことで、広告を受注できるようになった。
  • 「献立に悩む人たち」と、「商品の良さを伝えたい人たち」の間をとりもつのが広告の役割。商品を利用したレシピのコンテストなど、ユーザと広告主の両方にメリットのある広告しか使わないという。
  • 「80万人が年間に50億円消費する商品があったとする。これを55億円にすることを目標にするのではなく、あと8万人だけ多くの人に満足してもらおう、と考えるべき」

「良いものを作って満足してもらえば、自然とビジネスは成長するはず」なんて言葉があるけど、もっと積極的に、「満足してもらえ、かつビジネスとして成り立つことしかしない」という強固な意志がクックパッドを支えているようだ。